キュービクルを設置、運用するうえで気になるのが点検です。必要性や実施のタイミングがわからず困っている方もいるでしょう。結論から述べると、設置後は定期的に点検を実施しなければなりません。点検を怠ると、事故などのトラブルを起こしやすくなるからです。この記事では、点検の内容、実施するタイミング、外部へ委託した場合の費用の目安、委託する事業者の選び方などを詳しく解説しています。キュービクルの点検について理解を深めたい方は参考にしてください。
目次
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キュービクルとは
発電所などから送られてきた高圧の電気を受電して、施設などで利用できる電圧(100ボルトまたは200ボルト)に変圧する設備です。金属製のボックスの中に関連する機器一式が納められています。具体的には、電圧を調整する変圧器、回路の開閉に関わる開閉器、電流や電圧などを測定する計器、トラブルが起きたときに機器を保護する保護装置などで構成されます。
キュービクルの設置を求められるのは、契約電力50kW以上(高圧受電契約)の施設などです。本契約を締結している事業所は、高圧の電気を受電するためキュービクルの設置を求められます。高圧受電契約のメリットは、低圧受電契約(契約電力50kW未満)よりも電気代単価が安くなることです。ちなみに、発電出力50kW以上の太陽光発電所もキュービクルの設置を求められます。規模の大きな太陽光発電所を設置する場合は注意が必要です。
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キュービクルの保安点検は義務
キュービクルは、電気事業法で自家用工作物に位置付けられています。自家用工作物は、高圧以上で受電する電気設備、小出力以外の発電設備などといえるでしょう。キュービクルを含む自家用工作物は、毎月または隔月で保安点検(月次点検)を実施しなければなりません。点検時期の違いは、絶縁監視装置の有無によるものです。この装置を付けている場合、一定の安全性を確保できるため隔月の保安点検が認められます。以上に加え、年に1回の年次点検も必要です。
外部委託承認制度とは
自家用工作物の設置者は、保安の監督をさせるため電気主任技術者を選任しなければなりません。工事・運用・維持に従事するものは、電気主任技術者がだす保安のための指示に従うことになります。ただし、自社で選任(採用)するとなるとコストがかかるため、多くの事業者は外部委託承認制度を活用しています。この制度は、一定の要件を満たす外部の電気主任技術者などへ保安監督業務を委託できる制度です。外部委託承認制度を活用すると、電気主任技術者を選任する必要はなくなり、常勤ではない方法による保安監督業務が認められます。
キュービクルの保安点検の内容
保安点検の内容は、月次点検と年次点検で異なります。基本的な内容は次の通りです。
月次点検
主に施設運転中に点検・測定・試験を実施します。年次点検よりも、簡単に実施できるといえるでしょう。基本的な点検内容は次の通りです。
【内容】
- 外観点検
- 漏洩電流測定
- 電圧・電流測定
具体的には、開閉器・変圧器・配電盤・制御盤・外箱・接地装置などの外観点検を実施します。ここでいう外観点検は、運転中の施設を肉眼、音響、臭覚、温度計などを使って点検することです。例えば、外箱の損傷や機器の異音・異臭、配線の過熱、取り付け状態を確認したりすることを指します。また、月次点検では変圧器の漏洩電流測定、配電盤の電圧・電流測定なども実施します。
年次点検
施設の運転を停止して精密な点検・測定・試験を実施します。月次点検の内容に加えて、より専門的な点検を実施するといえるでしょう。基本的には、複数名で実施することになります。以上の特徴があるため、電気主任技術者の指示に従い、外部スタッフが点検を実施するケースが少なくありません。基本的な点検内容は次の通りです。
【内容】
- 外観点検
- 観察点検
- 絶縁抵抗測定
- 継電器動作試験
- 漏洩電流測定
- 電圧・電流測定
- 保護装置動作試験
観察点検は、施設の運転を停止してからキュービクルに触れて行う点検です。外観点検に加えて実施します。年次点検では、開閉器・遮断器・断路器・変圧器・配電盤などの絶縁抵抗測定、開閉器・遮断器・配電盤の継電器動作試験、変圧器の漏洩電流測定・絶縁油点検・内部点検、接地装置の接地抵抗測定などを幅広く実施します。
キュービクルの保安点検の費用
受電設備容量 | 月額 |
100KVA | 9,000~11,000円程度 |
200KVA | 12,000~17,000円程度 |
500KVA | 20,000~28,000円程度 |
外部の事業者へ保安点検を依頼したときにかかる費用はケースで異なります。具体的な費用は、依頼する事業者、サービス内容、受電設備容量(KVA)などをもとに決まるといえるでしょう。一般的な目安を示すと、受電設備容量100KVAであれば月額9,000~11,000円程度、受電設備容量200KVAであれば月額12,000~17,000円程度、受電設備容量500KVAであれば月額20,000~28,000円程度で依頼できます。この金額は、月次点検・年次点検に加え、遠隔監視、緊急出動、各種書類の作成などを含みます。以上は目安であるため、実際の金額、サービス内容は、見積もりや打ち合わせで確認が必要です。
保安点検などで、機器の故障が見つかったときは修理・交換を行います。修理・交換の費用は、ケースで大きく異なります。機器の種類や故障の程度で費用が決まるからです。したがって、数万円程度で済むこともあれば数百万円かかることもあります。メーカーの保証を受けられることもあるため、購入時に確認しておくとよいでしょう。
キュービクルの保安点検をしなかった場合のリスク
前述の通り、キュービクルは月次点検・年次点検が必要です。点検を怠ると機器の異常や故障を見逃してしまう恐れがあるため注意しましょう。大きなトラブルが発生すると、操業を一時的に停止しなければならないことや施設を利用する顧客に迷惑をかけることなどが考えられます。保安点検を実施しないことで想定される主なトラブルは次の通りです。
感電や火災
キュービクルの保安点検には、漏洩電流の測定が含まれています。したがって、保安点検を怠ると、漏洩電流が発生するかもしれません。キュービクルに触れたスタッフが感電することも考えられるため十分な注意が必要です。同様に、漏洩電流が原因となり火災が発生することも考えられます。いずれも人命にかかわることがある重大な事故です。このような事故を起こすと、事業者は社会的な信用を失ってしまいます。事故で人命が失われると、謝罪や金銭では解決しきれない問題になるでしょう。キュービクルを設置する場合は、これらのリスクを踏まえて定期的に点検を実施しなければなりません。
停電
保安点検を怠ると、停電につながることもあります。原因のひとつとしてあげられるのが外箱の損傷です。例えば、金属製の外箱が錆びて穴が開くなどが考えられます。外箱に穴が開くと、内部へ雨水などが侵入して停電を起こすことがあります。停電が起きると、工場は基本的に操業できません。また、オフィスビルなども電気を使えなくなってしまいます。一定期間にわたり、事業は停止してしまうでしょう。定期的に外観点検を実施しておけば、このような事態を防げる可能性は高くなります。外箱を含め目視で損傷などを確認するからです。このほかにも停電の原因は考えられます。トラブルを起こさないため、キュービクルを設置した場合は定期的な点検が求められます。
波及事故
波及事故は、キュービクルで起きた事故がきっかけとなり、電力会社の配電線が停止して、同系列の配電線を利用している周辺施設などの電気設備まで停電させてしまう事故です。影響を与えた範囲によっては、損害賠償責任を問われることもあります。波及事故の主な原因は設備の老朽化です。もちろん、自然現象や故意・過失などでも起こりますが、保守点検を適切に実施していれば防ぎやすくなります。波及事故を起こすと、損害賠償責任を問われる恐れがあるうえ近隣施設との関係も悪化してしまいます。万が一に備えて保安点検を実施しましょう。
電気代の損失
キュービクルを設置する主なメリットは、高圧受電契約を締結することで電気料金単価を引き下げられることです。ただし、保守点検を怠るとメリットを実感しにくくなる恐れがあります。機器の劣化により変換効率が悪化してしまうからです。変換効率が悪化すると、電力ロスが多くなってしまいます。簡単に説明すると、電力を無駄にすることになります。電気料金を引き下げるためにキュービクルを導入したのであれば、定期的な点検により良い状態に維持しておく必要があります。
キュービクル保安点検の業者選びのポイント
キュービクルの保安点検は、一定の要件を満たす外部の事業者へ委託することができます。ただし、どの事業者でも同じ品質の保安点検を実施できるわけではありません。ここからは、事業者選びのポイントを解説します。
点検実績から専門知識と経験を確認
2004年まで外部委託管理業務を行えたのは、国から指定を受けた事業者だけでした。2004年以降は、一定の要件を満たす民間事業者(電気保安法人)も受託できるようになっています。事業者の選択肢が増えため、専門知識を評価して選ぶことが重要です。評価の参考にしたいのが実績です。実績豊富な事業者は、さまざまな経験を積んでいるため専門知識が豊富と考えられます。また、サービスの質が高いため豊富な実績を残せているのでしょう。保安点検を依頼する事業者は、公式サイトや打ち合わせなどで実績を確認してから選びましょう。
アフターフォローなどの補償サービス
適切な点検を行っていても、全てのトラブルを防げるわけではありません。ケースによっては、点検直後に事故が起きてしまうこともあります。アフターフォローが充実している事業者を選んでおくと、このようなケースでも落ち着いて対処できます。設備費用や施工費用を補償してくれる、緊急メンテナンスを実施してくれるなどが考えられるからです。具体的なアフターサービスは依頼先で異なります。この点も確認してから事業者を選びましょう。
キュービクルの老朽化による事故は未然に予防しよう
キュービクルが関連する事故の中でも、特に注意したいのが漏電による火災・感電と波及事故です。これらはメンテナンス不良や機器の老朽化などによって引き起こされます。したがって、月次点検・年次点検だけにこだわらず、こまめに異常をチェックしておくことが重要です。老朽化が目立つ場合は、キュービクル本体の交換も検討しなければなりません。費用はかかりますが、安全性と変換効率を大きく高められる可能性があります。さまざまなリスクを想定して、柔軟かつ適切に対処しましょう。
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キュービクルは保安点検が必要です
この記事では、キュービクルの点検について解説しました。キュービクルは高圧の電気を受電して低圧に変圧する設備です。電気事業法で自家用工作物と位置付けられているため、月次、年次点検を実施しなければなりません。保安点検の主な内容は、外観点検・観察点検・各種測定・各種試験といえるでしょう。これらを怠ると、漏電を原因とする感電や火事、波及事故などを起こすリスクが高くなるため十分な注意が必要です。
故障や老朽化が目立つ場合は、キュービクル本体の交換を含めた対策を検討するほうがよいかもしれません。キュービクルの交換は、複数メーカーの製品を扱っているKUIYAにご相談ください。設置条件などをおうかがいして、お悩みに合わせた製品をご提案いたします。