産業用太陽光発電の運用に保険は必須? 理由と災害例

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SDGsの流れから国をあげて太陽光発電を推奨するようになり、日本でも多くの企業や家庭で発電システムの導入が進んでいます。スタートした2012年ごろに比べ、現在は価格が低くなって品質は良くなりました。発電効率も上がっています。

とはいえ、やはり太陽光発電システムの導入には高額な費用がかかるもの。そこでメーカーの保証とは別に保険に入る必要はあるのだろうか? と悩む方もいるでしょう。

ここでは太陽光発電システムの導入に伴い、保険に加入した方がよいのかどうかを説明します。特に産業用太陽光発電の場合に保険加入はどうすべきなのか、加入の理由はなぜか、どんな保険があるのかを順番に確認していきましょう。

産業用太陽光発電の運用前に保険に入ったほうがよい?

家庭用太陽光発電システムに比べ、産業用太陽光発電システムは手間もコストも扱う電気量も膨大です。つまり、万が一の際に受ける被害も雲泥の差。そのため、産業用太陽光発電を導入する前には、まず保険加入を済ませてから運営を始めることが大切なのです。

以下の通り、保険加入すべき具体的な理由は3つあります。

  • メーカー保証のみではリスクがカバーしきれないため
  • 再エネ特措法で努力義務が明示されているため
  • 賠償責任が発生するリスクがあるため

理由①メーカー保証のみではリスクがカバーしきれないため

通常、産業用太陽光発電についているメーカーの保証のみでは、自然災害などのさまざまなリスクに対応しきれません。その理由は、メーカー保証が対象とするのは、主に製造時の不具合によるものだからです。

メーカー保証は、次の2つがあります。

【システム保証】
製造時の不具合や、マニュアル通りに使用したにもかかわらず故障した場合に無償修理をします。設置後10年程度と有効期限つきですが、有償で期間を延長できる商品もあります。

【出力保証】
太陽光パネルの出力がメーカー提示の規定値を下回った場合に、無償でパネル交換や取り付けを行います。保証期間はメーカーによって異なり、10年のものから25年まで対応するところもあるため、期間も考慮に入れるようにしましょう。

これらの保証は落雷・地震・台風・強風・大雨・飛来物による故障や損害といった場合には対象外となり、補償はしてもらえません。そのため、自然災害の発生や第三者へ賠償をしなければならないとき、メーカー保証は使えないことが一般的です。

もちろん、太陽光発電システムは野外に長期間設置するものであるため、耐久性が高く自然災害の影響も考慮して設計されています。ただし一般的には20年という運用期間の中で、最後まで無傷でいられる可能性は低いと考えるのが当然です。

そのため、損害保険への加入が国によって勧められています。

理由②再エネ特措法で努力義務が明示されているため

産業用太陽光発電は、再エネ特措法で保険加入を努力義務と明記されています。努力義務のため違反した場合の罰則などはないのですが、あまりにもリスクが大きくなると判断した国によって、保険加入は推奨されているのです。

産業用太陽光発電はその巨大な規模から地震や豪雨、土砂災害、台風などの影響を受けやすく、飛来物による損傷も受けやすいという特徴があります。

日本という場所柄、万が一と言えないほどには頻繁にリスクにさらされるため、保険の加入は妥当です。

理由③賠償責任が発生するリスクがあるため

産業用太陽光発電の部品が破損した結果、人や家屋などに被害を与えてしまうこともあるでしょう。たとえば地震で割れた太陽光パネルが強風で飛来し、一般家庭に激突したといったような場合です。

そうすれば設備の撤去や修繕だけでは終われません。大きな賠償責任も出るため、リスクも巨大です。自社でカバーできるとは断言できないため、保険が必要になります。

産業用太陽光発電におすすめの保険【事業者向け】

では、具体的にどのような保険に加入すべきかをみていきましょう。以下の5つは最低限検討すべき保険商品です。

  • 企業総合保険
  • 施設賠償責任保険
  • 休業損害補償保険
  • 火災保険
  • 動産総合保険

企業総合保険

企業にまつわる総合保険で、システムなどの物的損害リスクに備える保険です。火災・風災・落電など自然災害による損害や、盗難、衝突事故、意図的ではない破損事故まで広い補償対象になっています。

パネル・パワーコンディショナー・架台・金具・監視システム・ケーブルなど太陽光発電に関係する一式が対象です。

ただし、地震・津波・戦争による事故は対象外。特約で付加は可能ですが、保険料は高額になるためおすすめはしません。

施設賠償責任保険

第三者にたいする賠償金を補償するためには、施設賠償責任保険が必要です。たとえば強風で太陽光パネルが飛び、近隣の住民や住宅に損害を与えてしまった場合などに利用できます。

補償内容は以下の通りです。

  • 法律上認められた損害賠償
  • 損害防止軽減費用
  • 協力費用
  • 争訟費用
  • 弁護士費用
  • 事故発生時の緊急措置費用

残存物の片づけ費用やお見舞金も事故時の発生費用として受け取れますが、企業が独断で行った被害者への見舞金は対象外です。

また、施設賠償責任保険は火災保険などに比べ、加入率は高くありません。その理由は、保険の対象となるには「近くに住宅などがある発電所」や「周囲に通行人が多い発電所」、または「近隣に車の往来が多い発電所」といった条件に当てはまらなければならないからです。つまり、必要のない立地の発電所はそもそも加入する必要がありません。

休業損害補償保険

休業損害補償保険は「売電収入補償特約」とも呼ばれています。事故や災害で太陽光発電システムが破損し、復旧するまでの間に失った売電金額を補償する保険で、利益損害のための商品です。

収支悪化のリスクを軽減するため、特に運転資金に不安がある場合には加入を検討しましょう。ただし、この商品では電力会社の出力制御による損失は補償対象外です。

火災保険

企業総合保険に加入しない場合、必須なのが火災保険です。

火災保険は自然災害や盗難、第三者による違法行為によって被害を受けるなどのときに補償を受けられます。

落雷・火災・ひょう・水害・盗難・風災・落下物などが主な補償対象です。

動産総合保険

こちらは企業総合保険とカバー範囲はほぼ一緒ですが、電気的・機械的事故は対象外のことが多いため、企業総合保険に加入済みであれば不要です。

ただし一般的な火災保険にしか加入していなければ、火災保険でカバーしきれない対象が入っているため検討をおすすめします。

太陽光発電の運用におすすめの保険【個人向け】

それでは、家庭用太陽光発電での保険についても紹介します。

家庭用太陽光発電は規模が産業用に比べて小さいため、基本的にはメーカーの補償で十分であるケースが一般的です。とはいえ、保険商品がないわけではありません。

検討するとしたら、次の3つの商品になるでしょう。

  • 住宅総合保険
  • 住宅火災保険
  • 個人賠償責任保険

住宅総合保険

住宅総合保険は火災保険よりも広い補償範囲を持つ商品です。

  • 火災
  • 落雷
  • 風災
  • ひょう災
  • 衝突
  • 爆発
  • 集団行動に伴う暴力行為
  • 盗難
  • 雪災

など

ただし、地震や津波、噴火といった天災は補償対象に含まれません

住宅火災保険

一般的な火災保険です。基本的に、太陽光発電の太陽パネルは建物に組み込まれると覚えておきましょう。

補償範囲は以下の通りです。

  • 火災
  • 落雷
  • 風災
  • 水漏れ
  • 爆発
  • 雪災
  • 物体落下や衝突
  • 盗難

ただし、こちらも天災(地震や津波、噴火など)は対象外ですので、地震保険に別途加入する必要があります。

そして家を建てて火災保険をつけたあと、数年後に太陽光発電システムを導入した場合には、再度保険料を見直すことがおすすめです。理由は太陽光パネルの設置により家の評価額が変わるため。適切な価格の保険をかけることが、万が一のときの補償額満足度につながります。

個人賠償責任保険

個人賠償責任保険は第三者への損害時に利用できる保険です。火災保険の特約としてつけられますが、個別での契約もできます。

以下は補償の対象となる損害例です。

  • 台風でパネルが飛ばされて通行人に怪我をさせた
  • パネルが落下して近隣の車に衝突した
  • 飛んだパネルが隣家の窓ガラスを破損した

このような場合、被害者にスムーズかつ真摯な対応をすることで今後の近所付き合いが変わってくるでしょう。個人賠償責任保険に入っていれば、被害者への賠償金支払いのほか、さまざまなサポートを保険会社が担当してくれます。

産業用太陽光発電に関するトラブル

保険料は決して安くはないため、最低限メーカーの保証さえあれば大丈夫と思う方もいるでしょう。しかし、前述したように、メーカーがあらかじめつけている保証は太陽光パネルやシステムそのものの不都合が原因で動かなかったといったことにしか使えません。

なぜ民間の保険契約が必要なのか、保険でカバーできると考えられる太陽光発電に関するトラブルを3つ紹介します。

トラブル①太陽光パネルが通行人にぶつかった

日本は災害国です。毎年初夏から秋にかけて台風が飛来します。最近では台風の規模が巨大になってきており、今までは考えられなかった被害も多々起きるようになってきました。

その中のひとつに、太陽光パネルが強風で飛ばされ、通行人に当たったという事案があります。また逆に、風で飛ばされた重量のあるものが屋根の上の太陽光パネルにぶつかり、破損したという件もありました。

災害以外でも人が道から悪意を持ってパネルに石を投げつけ、パネルを破損。落ちたパネルのかけらで通行人がケガをするということもあります。鳥が石をパネルの上に落としたといった事案もあるため、万が一に備えることは大切です。

トラブル②自然災害で設備が壊れた

台風と同じく、最近の日本では災害級の豪雨が多発しています。数日間降り続く豪雨によって太陽光発電所が水没したり、パネルやケーブルなどの設備が水に浸かることで故障したりといった事案もますます増えているのです。

さらに、パネルに直接落雷したり、周囲に雷が落ちたりすることによってダメージを受ける誘導雷が設備を故障させることも増えています。

具体例では、2021年の7月3日、静岡県熱海市伊豆山地区で土砂災害が発生。土砂崩れにより山の中に設置してあったメガソーラーの抽出事故が起きています。

トラブル③パネルが歪んでしまった

積雪地方では、もちろん太陽光発電パネルに傾斜をつけるなどをして雪が積もらないように計画します。それでもなお、猛吹雪の影響でパネルの上にも積雪し、雪の重みで太陽光パネルが歪んでしまうこともあるのです。

パネルの中央が大きく歪んだりガラスが割れてしまったりすると、当然発電効率は下がります。

【太陽光発電】災害発生時にやってはいけないこと

産業用太陽光発電の運営中に何等かの災害が発生したときに、絶対やってはいけないことは「近づいて触る」ことです。

ソーラーパネルが破損したり水没したりしたとき、慌てて近寄ってしまう可能性がありますが、破損していても太陽光があれば発電しています。パネルは300V以上の電気を発電しているため、人が素手で触ると感電の恐れがあるのです。大変危険なので、事故の際には人が近づけないようにロープを張るなどの対応をしましょう。

もしもすぐに撤去できない場合など、どうしても太陽光パネルに近づかざるを得ない場合には、乾燥している手袋や絶縁手袋などを使って触るようにしてください。間違っても水に塗れた手袋を使ってはいけません

また、雨などで水たまりがある場合に備え、足には長靴を着用します。慎重にしすぎて悪いことはありませんので、電気から身を守りながら状況確認をしましょう。

太陽光発電の保険料の相場

太陽光発電についての保険料は、保険の種類や保険会社の商品、そして補償対象の設備などによって変動します。よって保険料の相場は出しにくいもの。とはいえ、例があるためいくつかの保険商品の料金目安を紹介しましょう。

たとえば動産総合保険の年間保険料は、産業用太陽光発電の初期費用に対して2.5~3.5%の金額で算出されるのが一般的です。

そして休業損害補償の保険料目安は、1日の売電金額と復旧期間に応じて算出されます。例として、1日10,000円の発電所で復旧までに1年かかったとしたら、5年間の契約期間で50,000円程度が目安です。

また「施設所有者賠償責任保険」については、目安は以下の通りです。

敷地面積1,000平方メートルに対し、補償金額が対人・対物で1億円だった場合、保険期間は1年で保険料は5,000円から。補償金額が最大1億円というのは、比較的一般的な補償内容です。とはいえ、発電所設置の場所にあるかどうかや敷地面積の広さによるところも多いため、いずれもあくまで目安として考えてください。

参考:企業省エネ・CO2削減の教科書

太陽光発電の保険の算定基準

産業用太陽光発電保険の算定基準には、以下の項目があります。

  • 建物の構造
  • 設置工事の費用
  • 設置環境

建物の構造

産業用太陽光発電を導入している建物の構造や規模は、保険料の算定に関係しています。なぜなら、建物の構造によって災害リスクが変わるからです。極端な例でいえば、木の家とコンクリートの家では耐久性が異なります。リスクが増減するため、保険料を出すときには基準として必須になるのです。

保険に入る前には建物に使用されている建材や設備構造について確認しておきましょう。

設置工事の費用

保険料は初期費用も考慮して算出されます。太陽光発電システムにおける初期費用とは、設置工事の費用のことです。

たとえば、架台やパネルといった部品の搬入にかかる輸送費、ケーブル代、架台同士をつなげる作業やパワーコンディショナーの設置費用などの全体にかかる費用がそれに当たります。かけたお金が大きければ、それだけ耐久性や品質の良さが期待でき、万が一のときの損害の大きさが図れます。

さらに、初期費用は保険金の受取額にも影響を及ぼすものです。そのため保険の見積もりを受けるときには、まず保険料と保険金を確認しておくことを忘れないようにしましょう。

関連記事:産業用太陽光の架台の材質や基礎の設置方法とは?

設置環境

日本は南北に細長い国で、場所によって気象の特徴が大きく違います。そのため保険料の算出には太陽光発電システムの設置環境も関係し、場所によって異なるリスクを考慮して金額が決定するのです。

たとえば、雪国か温暖な地域か。強風が頻繁に吹くか、そうでもないか。地震が多い地域や台風の通り道ではないか。これらのことを加味し、もしも災害リスクが高い場合には保険料がアップします。

そのため、保険料の負担や災害時の損害リスクを考えると、場所によっては早々に売却を検討した方がいいケースもあるでしょう。

関連記事:太陽光パネル設置時に重要な架台とは? 種類や基礎方法を紹介

産業用太陽光発電を運営する前に保険商品加入を検討しよう

太陽光発電はその導入や運営に大きなコストがかかります。特に10kWhを超える産業用太陽光発電であればなおさらのこと。コストがかかるということは、何等かの災害や事故による損害リスクも多いということです。

そのため、まずシステムの運営を始める前に保険を検討することが大切。なぜ導入前に検討することが大切かといえば、設置する環境によって保険料が異なるためです。

導入したあとに保険料を見ても、高いから別の場所で運営しようとはできません。最初からこのくらいの保険料がかかるとわかったうえで運営すれば、どれくらいのコストが必要なのかもわかり余裕をもって運営できるでしょう。

日本は災害大国であるため、長期間の運営中に何が起こっても損害が抑えられるように手を打っておく必要があります。大きな赤字を抱えずに済むよう、できることをしておきましょう。

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