スクリュー杭における引き抜き強度試験の概要と試験を実施したい理由

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太陽光発電所の基礎工事では、スクリュー杭を用いることが少なくありません。用いる場合は、引き抜き強度試験の実施を検討しましょう。実施せずに工事を始めると、無駄な費用がかかることや事故のリスクが高まることなどがあるからです。

この記事では、スクリュー杭の引き抜き強度試験の概要と必要性を解説しています。

さらに、この試験を実施するケースが増えている理由も紹介しています。太陽光発電所の基礎工事を予定している方は、確認しておきましょう。

スクリュー杭の引き抜き強度試験とは?

この試験は、スクリュー杭が基礎工事として適切か、どのような打設方法が合理的か評価するための試験です。具体的には、対象となる土地に一定の深さまで打ち込んだスクリュー杭に計測器を付けて、重機などで一定の力をかけて引っ張り耐久性を評価します。例えば、重機を用いて1,000kgの力で上に引っ張るなどが考えられます(引っ張る強さはケースで異なります)。

力をかけると抜けてしまう場合は、強度が不足しているといえるでしょう。田畑をはじめとする地盤が軟らかいエリアでは、わずかな力で抜けてしまうこともあります。単にスクリューを長くすれば、強度を確保できるわけではありません。試験で強度が出ないとわかった場合は地盤改良などの対処が必要です。

反対に、試験で十分な強度があるとわかった土地は、短い杭でも対応できる可能性があります。長さがなくても十分な強度を確保できるからです。適切なものを選ぶことで、工事の手間や費用を抑えやすくなります。

また、地盤の固さによってでは、検討するべき打設方法も異なります。例えば、軟らかい地盤や平均的な地盤では、アースオーガーなどの掘削ドリルを用いて杭を打つオーガー打設などが用いられます。土地に適した打設方法を見極めやすくなる点も、この試験を行う目的といえるでしょう。具体的な打設方法は、試験を実施する事業者が提案してくれることが一般的です(試験の結果、他の方法が適していると評価されることもあります)。

引き抜き強度試験を実施するタイミングは、工事を実施する前が基本です。工事に必要な情報を得られるため、事前試験のひとつとして多くの現場で用いられています。工事の手間と費用を抑えたいときなどに検討したいといえるでしょう。

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スクリュー杭の引き抜き強度試験が必要な理由

スクリュー杭工法の強みは、工事にかかる費用を抑えやすいことと施工期間が短いことです。地面に杭を打ち込むうえ、その長さも調整できるため(杭の長さでデコボコな土地でも高さを一定にできる)、整地やコンクリートが固まる時間を必要とするコンクリート基礎よりも費用・工期とも抑えやすい傾向があります。

魅力的な工法ですが、あらゆる土地に適しているわけではありません。地盤の状況などによっては他の工法のほうが適していることも考えられます。例えば、地盤が非常に硬い土地では、スクリュー杭を思うように打ち込めないこともあります。このようなケースでは、下穴を掘ってから杭を打ち込むなどの工夫が求められます。工事予定の土地に対する適性を評価するため引き抜き強度試験が必要になるのです。

この試験は、基本的に工事前、具体的には施工計画を立案する前に実施することになります。使用予定の杭で必要な強度を確保できることを確かめる試験だからです。十分な強度を確保できない場合は、使用する杭の見直しとこれに合わせた施工計画の立案が必要です。

手間がかかるため面倒と思うかもしれませんが、引き抜き強度試験を実施することにより工事にかかる費用、施工期間、事故のリスクも抑えやすくなります。例えば、地盤が固いとわかれば、杭を慎重に選ぶことでその破損を減らせます。追加の発注がなくなるため、工事費用の増大や工期の延長を抑えられるでしょう。あるいは、計画通りの強度を確保できることにより、工事完了後に災害をはじめとする不測の事態と遭遇しても事故などは起こりにくくなります。さまざまなリスクを管理するため引き抜き強度試験は必要です。特に、工事の規模が大きくなると、想定されるリスクも大きくなります。したがって、大規模な工事では、引き抜き強度試験の必要性がさらに高まるといえるでしょう。

スクリュー杭打設の方法

適切な打設方法は、地盤の固さにより異なります。ここでは、地盤が固い場合と地盤が軟らかい場合に分けて、基本的な打設方法を解説します。

地盤が固い場合

地盤が固い場合、そのままの状態だと杭を打ち込めないことが少なくありません。もちろん、強引に打ち込むことは可能ですが、ケースによっては杭が変形してしまうことや破損してしまうこと、地中に埋まっている障害物によって杭が傾いてしまうことなどがあります。これらにより、追加で費用がかかることや十分な強度を確保できず事故につながることがあるため注意が必要です。地盤が固いケースとして、岩盤や小さな岩が埋まっているケースなどがあげられます。

地盤が固いことでトラブルが予想される場合は先行掘削を実施します。これは杭を打つ場所を決めて、当該ポイントに杭を打つための孔を掘る作業です。これにより、杭を打ち込めないほど固い地盤でも杭を打ち込めるようになります。先行掘削の方法は、地盤を掘り進める重機の先端から空気を噴出して粉砕物を吹き飛ばしながら掘削を進める方法とオーガー(回転)とバイブレーション(振動)を用いて重機で掘削を進める方法に大きく分かれます。

例えば、後者ではオーガーとバイブレーションで所定深度まで掘り進めたのち、アタッチメントを取り換えてからスクリュー杭を打設します。一見すると簡単なように思えますが、地盤の固さなどによっては所定深度まで掘り進めことすら手間がかかります。所要時間などには十分な注意が必要です。ただし、固い地盤は、所定深度まで掘り進めれば一定の引き抜き強度を確保できる傾向があります。

つまり、何もせず強引にスクリュー杭を打ち込むよりも精度を高めやすいのです。この点も、ひと手間かけて先行掘削を行うメリットといえるでしょう。

地盤が軟弱な場合

地盤が軟らかい場合、そのままの状態でも簡単に杭を打ち込めます。ただし、十分な強度を確保できる保証はありません。強度が不足している状態で工事を続けると、完成してから自重に耐えられず設備が地面に沈み込んでしまうことや強風にあおられて杭が抜けてしまうことがあるため注意が必要です。打ち込みそのものは簡単ですが、トラブルに発展するケースがあるため、軟弱な地盤におけるスクリュー杭の適性は慎重に評価しなければなりません。地盤が軟らかい土地の例として、地下水が流れている土地、地中に空洞がある土地などがあげられます。

基本となる打設方法は「軟弱地盤用に開発された羽が大きいスクリュー(大羽杭)を使用する」「スクリュー杭の長さを変更して十分な強度を得られる支持層まで届かせる」「十分な強度を得られるように地盤を改良する」の3つです。例えば、大羽杭は地盤に大きな羽ががっちりと食い込むため、上下に引っ張られたときの強度が高くなります。この特徴から、軟らかい地盤に向いていると考えられます(すべての地盤に適しているわけではありません)。

対象となる土地の地盤が非常に弱い場合、以上の方法を用いても十分な強度を確保できないことや十分な強度を確保するには費用と工期がかかりすぎることも考えられます。このようなケースでは、スクリュー杭基礎以外の工法へ変更が必要かもしれません。ケースによっては、一般的に費用が割高で工期も長いとされるコンクリート基礎のほうが、費用・工期とも抑えられることがあります。コンクリート基礎は、型枠にコンクリートを流し込んで基礎を作る工法です。高さを調整しにくいため高低差のある土地には向いていませんが、強度・耐久性は優れていると考えられています。対象となる土地の地盤が軟らかい場合、杭の打設方法について十分な検討が必要といえるでしょう。

スクリュー杭の引き抜き強度試験の内容

費用や工期を抑えるため、あるいは事故などのトラブルを防ぐため強度試験は欠かせません。強度を確かめる試験として以下の3つがあげられます。それぞれの特徴・内容は異なるため注意が必要です。これらの試験について詳しく解説します。

スクリュー杭の引き抜き試験

工事予定地に所定の深度まで杭を打設して、これを一定の力で引っ張ることにより強度を確かめる試験です。具体的には、長さ2,000mm、羽の長さ50mmのスクリュー杭を打ち込んで1,000kgの力で引っ張るなどが考えられます。引っ張る方法として、杭に計測器を取り付けて重機で引っ張る、作業用三脚と油圧ジャッキを用いて引っ張る、杭の両端に反力装置を設置して油圧ジャッキで引っ張るなどがあげられます。

太陽光発電所などで想定される主な荷重は、自重と風によるものです。風による荷重は、正面と後面から風を受けたときなどに発生します。前者で生じるのは押し込み、後者で生じるのは引き抜き荷重です。また、左右からの風であおられることも十分に考えられます。これらのケースを想定して、引き抜き試験では上方向(垂直)・横方向(水平)に力を加えて強度を確かめます

必要とされる強度や杭が引き抜かれる荷重はケースで異なります。2,000kgの力で引っ張ってもびくともしない土地がある一方で、わずか200kg程度の力で引っ張ると杭が抜けてしまう土地もあります。また、環境や条件などによっては、通常であれば十分と考えられる1,000kg以上の引き抜き強度を求められることもあります。ケースにあわせて柔軟に対応しなければならないため、実際の強度を確かめられる引き抜き試験が求められるのです。

スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)

スクリューウエイト貫入試験は、スクリューポイントを取り付けたロッドと呼ばれる鉄の棒を地盤にさして、その硬さや軟らかさ、締まり具合を確かめる試験です。具体的には、おもりを載せたロッドを地面にさして回転させたときに沈み込む深さをもとにこれらを評価します(正確にはN値を算出します。)。簡単にささる場合は地盤が軟らかい、簡単にささらない場合は地番が固いといえるでしょう。地盤が軟らかすぎると、設置した設備が沈み込むなどのトラブルが生じやすくなります。スクリューウエイト貫入試験は、その土地に合っている基礎の評価などに役立ちます。

試験方法は、手動式・半自動式・全自動式の3つです。手動式は載荷・回転・記録を手動、半自動式は回転のみ自動、自動式はすべてを自動で行ないます。検査を実施できる深度は10m程度です。これ以上深くなると、摩擦力が大きくなり試験の精度が下がってしまいます。

スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)は、スウェーデン式サウンディング試験と呼ばれていた試験方法です。旧名称からわかるとおり、スウェーデンの国有鉄道が採用したことをきっかけに普及したと考えられています。2020年のJIS改正をうけて、名称変更されました。名称変更が行われた主な理由は、日本で独自の発展を遂げて国際規格とは異なるものになっているからです。

ちなみに、本試験の特徴は、簡単かつ安価に実施できることといえるでしょう。これらの特徴を備えるため、現在では戸建て住宅における地盤調査などで幅が広く用いられています。

スクリュー杭の押込み試験

載荷板に荷重して地盤の支持力などを求める試験です。具体的には、地盤に打設した杭に何かしらの方法で下方向に力を加えて沈み込んだ量により支持力を求めます。基本的には、重機を用いて計器を取り付けた杭に下方向の力を加えます。時間をかけず試験を行いたい場合や重機の移動が難しい場合などでは、重しを用いて計器を取り付けた杭に荷重することもあります。

押し込み試験の特徴は、地盤の支持力を確かめられることです。したがって、試験を実施することにより、設備が自重などで沈下してしまうことを防ぎやすくなります。同様に、沈下によりいびつな力が加わり設備が破損することも防ぎやすくなるといえるでしょう。

押し込み試験は、積雪の多い地域や強風が吹く地域などで特に重要性が高いと考えられます。積雪により設備に大きな荷重がかかってしまうことや正面からの強風で設備に大きな荷重がかかってしまうことがあるからです。基礎が十分な強度を備えていないと、これらのケースでは設備の沈下などが起こりえます。さまざまなトラブルを想定して、引き抜き試験だけでなく押し込み試験も実施しておくほうがよいでしょう。

スクリュー杭の強度試験が増加している理由

太陽光発電所などを設置するときに、スクリュー杭の強度試験を実施するケースが増えています。出力500kW以上の設備だけでなく、低圧発電設備でも増加している点がポイントです。ここでは強度試験を実施するケースが増えている理由を解説します。

強度検査の義務化

増加の理由としてあげられるのが、2016年に導入された「使用前自己確認制度」です。「使用前自己確認制度」は、工事計画の届け出・検査の実施などが義務付けられていない出力500kW以上2,000kW未満の太陽光発電所も、設置者自らが使用前に検査を実施してその結果を国に届け出なければならないとする制度を指します。検査の対象が広がったことを受けて、検査の件数も増加しているといえるでしょう。

使用前自己確認制度導入の背景にあるのが、再生可能エネルギー固定価格買取制度により太陽光発電所の設置が増えていることです。十分な知識をもたないまま新規参入する設置者が増えたことなどで、太陽光発電所に関連する事故が多発しています。具体的には、強風でパネルが飛んで近隣住宅に被害を与える、豪雨などで土砂崩れを起こすなどの問題が発生しています。「使用前自己確認制度」は、このような状況を踏まえて導入されました。使用前自己確認の一環として、スクリュー杭の引き抜き試験を実施することもあります(具体的な確認方法は経済産業省でご確認ください)。

低圧発電設備での増加

「使用前自己確認制度」の対象から外れる低圧発電施設でも、強度試験を実施するケースが増えています。低圧発電施設でも、さまざまな事故が起きているからです。2017年に太陽光発電のJIS規格が厳格化された点も見逃せません。これらを背景として、強度試験を実施するケースが増えています。

ポイントは、引き抜き試験に加えて押し込み試験を実施するケースが多いことです。両試験を実施する理由は、パネルが強風を受けて杭が引き抜かれるだけでなく、積雪や自重で設備が沈下、倒壊することもあるからです。太陽光発電所は長期間の稼働を前提としているため、何かしらの理由で稼働期間が短くなると期待通りの収益をあげられません。このようなリスクを抑えるため、低圧発電設備でも強度試験を実施するケースが増えているといえるでしょう。

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この記事では、スクリュー杭の引き抜き強度試験について解説しました。引き抜き試験は、一定の深さまで打ち込んだ杭を重機などで引っ張って、対象となる土地の適性や最適な打設方法などを評価する試験です。実施することで、工事にかかる費用や事故のリスクを抑えたり、施工期間を短くしたりすることができます。太陽光発電所の基礎などにスクリュー杭を使用する場合は検討したい事前試験といえるでしょう。

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