SDGsが日本でも認識されつつある今、太陽光発電を積極的に取り入れる企業や家庭が増えています。その中でも最近増加しつつあるのは、ため池を使って太陽光発電をする方法です。これは「水上太陽光発電」と呼ばれています。
「水の上でどうやって太陽光発電をするの?」
「台風などの災害時にはパネルが飛んでいかないの?」
そんな疑問を解消するため、ここでは水上太陽光発電とは何か、その架台や設置方法、水上太陽光発電のメリットなどについて紹介します。
目次
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水上太陽光発電とは?
水上太陽光発電は、その名の通り水の上で行う太陽光発電のこと。通常、屋根や土地に太陽光パネルを設置して発電しますが、水上太陽光発電ではため池の上に太陽光パネルを設置して発電を行います。
別名は「水上ソーラー」や「フロート式太陽光発電」「浮体式太陽光発電」など。水に浮く架台を使ってそれぞれを島のようにつなげ、太陽光パネルを設置するのです。
日本は諸外国に比べて国土面積が小さいため、地上設置型の太陽光発電の場所を確保しにくいという問題があります。そこを解消できる手が、ため池を使う水上太陽光発電です。令和4年に農林水産省の防災課が発表したところによると、日本にはため池が約16万か所あります。
参考:農林水産省「ため池管理保全法に基づく都道府県別の対応状況について」
水上太陽光発電の架台の設置方法
水上太陽光発電で使う架台は、「フロート架台」と呼ばれるもの。浮き具のようなもので、その上にパネルを設置し、下はアンカーと呼ばれる係留具とつなげてため池の底に埋め込みます。
安定性を向上するための方法は、フロート架台同士をつなげて島を作ること。地震や強風からの揺れや衝撃からパネルを守ります。
関連記事:太陽光パネル設置時に重要な架台とは? 種類や基礎方法を紹介
水上太陽光発電のメリット
水上太陽光発電のメリットは次の5つです。
メリット①発電効率が維持できる
太陽光発電にとって重要なことは発電効率です。そして発電効率は、太陽光パネルの表面温度にも大きく関係します。
野立てや住宅用太陽光発電は、設置環境によってパネルの表面温度が上がりやすいもの。特に夏場などは気温の上昇で大きな影響を受けます。
太陽光パネルは野外に設置するものであるにもかかわらず、パネルが最も効率的に動く適温はなんと25度。しかし野立てや住宅用太陽光発電では、架台を高くしてパネルの下に風を通すことでパネル表面の温度を下げるくらいの対応しかできません。
その点、水上太陽光発電は水辺に設置するため温度上昇を抑えやすい環境です。水によって熱が自然に冷却されるため、特別な冷却設備の準備やコストなどもかかりません。
メリット②障害物が少ない
大金をかけて太陽光パネルを導入・設置しても、障害物などでパネルに光がうまく当たらない場合は発電効率が下がってしまいます。
たとえば緑が多い場所や住宅街での太陽光発電では、隣家や雑草、木々の影などが影響してパネルにうまく光が当たらず、発電量が減ります。しかし、周囲に邪魔するものがないため池の上であれば、太陽光を遮る障害物が少ない環境です。
さらに水面と並行に太陽光パネルを設置すると、太陽光との角度や向きを気にせずとも一定の発電量が期待できます。また、水面から反射された光をも吸収するため、発電量のさらなるアップも見込めるでしょう。
メリット③土地の造成が必要ない
野立て太陽光発電とは違い、水上太陽光発電は周囲の土地の造成工事が必要ありません。
土地の造成工事は、用途に合わせて土地の状況を変えていく工事のこと。たとえば山間部で太陽光発電しようとすると、地盤の強化・周囲の森林伐採・整地などの作業が必要です。この作業には、時間もコストもかかります。
しかし水上太陽光発電は水の上に設置するため、環境を整えるという意味では水面のゴミの除去程度で設置前作業が完了。時間とコストを大幅に縮小できます。
メリット④設置可能な場所が多い
前述したように、日本は諸外国に比べて太陽光発電の設置が可能な場所はあまり多くありません。しかし、ため池は全国に約16万か所もあるのです。これらをしっかり利用できれば、自国での発電量が増えるために海外から買い取る電気も減るうえ、災害時の対策も可能になります。
農業用ため池以外のため池は、多くの場合が未活用です。個人や企業で所有しているため池を釣り堀などにして活用しているところでは、維持管理コストで赤字経営になっているところもあります。
そこに水上太陽光発電を設置すると、売電収入で維持管理費用をカバーできるかもしれません。
メリット⑤漁業への貢献も可能
水上太陽光発電システムを設置すると、水面で太陽光が当たる箇所が少なくなります。その結果、藻や水草などの異常発生を抑える効果もあるのです。さらに水面からの水の蒸発も抑えられるため、水不足対策への期待もできます。
水上太陽光発電をすることは、水利組合と発電業者の双方にメリットがあると言えるでしょう。
水上太陽光発電のデメリット
残念ながら、水上太陽光発電はメリットばかりではありません。システム導入を決める前に次の4つのデメリットを確認し、何を優先するかを考えていく必要があります。
デメリット①施工できる業者が少ない
水上太陽光発電はいまだ発展中の設置運用方法です。そのため工事ができる業者が少なく、工事実績も野立て太陽光発電に比べるとほとんどありません。
取り扱っている業者が少ないうえに事例があまりないため、工事の期間も他の発電方法に比べて長期になりがち。業者との話し合いや作業工程に不安を抱える可能性もあるでしょう。
デメリット②自然災害への対策が必要
日本は言わずと知れた災害大国。特に水上太陽光発電は水の上に浮かべて発電させるため、他の設置方法とは違う災害対策も必要です。
たとえば野立ての太陽光発電であれば、雨や強風、地震の揺れについての対策が必要でしょう。しかし水上太陽光発電では、水に対する対策も常時必要です。
電気と水は相性がよくありません。配線類やパワーコンディショナーなどの各種機器類を、ため池の水によるショートや故障から守る処理が必要です。また、水によって各機器が腐食するリスクも高いため、防水・腐食処理なども行わなくてはなりません。
関連記事:産業用太陽光発電の運用に保険は必須? 理由と災害例
デメリット③メンテナンスが難しい
水上太陽光発電は他の設置方法に比べ、メンテナンスがしにくいうえに手間がかかります。
理由は、水上であるが故に人が実際に見て行う保守点検の足場が不安定であること。そしてアンカーや固定用ケーブルなどの点検のため、潜水が必要であることなどです。
さらにボートに乗って点検場所へ向かうこともあるため、天候によっては船が出せずメンテナンスの延期となるでしょう。
メンテナンスに手間と時間、コストがかかることは覚えておく必要があります。
デメリット④水位の変動への対応が必須
水面ですので、地面と違って常に動きます。そのため、他の設置方法と比べ安定性はデメリットになるでしょう。
波打つ水面にシステムを浮かせて設置することのリスクは、次の4つです。
- 池の底に埋め込んだアンカーが外れる
- アンカーとつないでいたフロート架台が外れる
- 強風などでフロート架台が大きく上下に揺れて配線や架台が破損する
- フロート架台同士の連結が外れて太陽光パネルが破損したり水面へ落下したりする
以上のリスクを避けるため、耐久性・質とともに高い部品を使わなくてはなりません。アンカーとフロート架台にはお金をかけることが大切です。
また、部品をつなげるケーブルは余裕を持たせることも重要。そうすれば、台風時など強風で上下に水位が変動しても、ケーブルの切断や架台の転覆などのリスクを少なくできるでしょう。
今後の水上太陽光発電の展開
いまだに事例は少ないのですが、国内の発電事業者は水上太陽光発電の設置運用に期待をかけ、進めつつあります。
現在の大きな水上太陽光発電では、株式会社スマートエナジーや三菱電機株式会社、京セラなどが有名です。
株式会社スマートエナジーは「川島太陽と自然のめぐみソーラー」という太陽光発電をしており、こちらは一般家庭用約2,300世帯分の消費電力を生み出しています。
そして三菱電機株式会社は香川県で「平木尾池水上メガソーラー」を運営。こちらはハスが群生しているため、植物との共存という珍しい事例でもあります。年間発電量は約290万kWh程度です。
そして京セラは、2018年に竣工した千葉県でのメガソーラーを持っています。年間発電量は約1,617万kWhで、一般家庭約4,970世帯分の年間電力消費量です。
しかし残念ながら、水上太陽光発電では大きな事故も発生しています。2019年の台風15号において、千葉・山倉水上メガソーラーで事故発生。強風によって火災が発生し、パネルが破損したのです。
この事故で、水上太陽光発電のデメリットが改めて浮き彫りになりました。そのため、復旧工事ではフロートアイランドの単純化やアンカー本数の増量などの対策を行っています。
水上太陽光発電の架台は特殊! 将来的に期待できる設置方法
太陽光発電といえば地上での設置が一般的ですが、最近は水上太陽光発電も増えてきています。他の設置方法とは違ったフロート架台と呼ばれる特殊な部品を使ってパネルを支えるのですが、太陽光が集めやすく発電効率が良いといったメリットがあります。
ただしメンテナンスが難しいなどのデメリットもあるため、ため池に太陽光発電システムを導入しようかと考えている場合は、事前にしっかりと情報を集めましょう。
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